第2章 お客様の「困りごと」を引き出す質問技術
家電販売では、商品知識が豊富でも、それだけでは販売にはつながりません。
なぜなら、お客様が本当に求めているものが分からないまま説明すると、「詳しい説明」にはなっても「私に必要な商品の説明」にはならないからです。
そこで重要になるのが「質問」です。
ただし、質問の目的は尋問のように情報を集めることではありません。
お客様と一緒に「自分には何が必要なのか」を整理していく。
これが目標です。
1.最初から「何が欲しいですか?」と聞かない
たとえば洗濯機売場で、
「どのような洗濯機をお探しですか?」
と聞いても、
「まだ決めていません」
「ちょっと見ているだけです」
となりやすいものです。
そこで、入り口を少し変えます。
「今お使いの洗濯機は、どのくらいお使いなんですか?」
これなら答えやすい。
「もう10年くらいです」
と返ってきたら、
「10年ですか。今回は故障でしょうか、それともそろそろ買い替えようかなという感じですか?」
ここから会話が始まります。
答えやすい事実 → 現在の状況 → 困りごと
という順番です。
2.質問は「5段階」で深掘りする
私は店頭では、次の流れが使いやすいと思います。
まず「今」を知ります。
「現在はどのメーカーをお使いですか?」
「何年くらいお使いですか?」
「容量は何kgくらいでしょうか?」
ここでは売ろうとしなくて構いません。
「今回はどういったきっかけでお探しなんですか?」
すると、
「壊れた」
「音が大きくなった」
「子どもが生まれる」
「引っ越す」
「古くなった」
などが出てきます。
ただし、ここで商品説明を始めないのがポイントです。
一歩踏み込みます。
「今お使いのもので、何か不便に感じているところはありませんか?」
ここが販売の重要ポイントです。
たとえば、
「洗剤を入れるのが面倒」
なら自動投入。
「汚れ落ちが気になる」
なら洗浄機能。
「干すのが大変」
なら乾燥機能。
「音が気になる」
なら運転音。
お客様の言葉から、提案の方向が決まってきます。
今度は不満ではなく、
「どうなったら嬉しいですか?」
を探します。
「今度買い替えるなら、これは欲しいという機能はありますか?」
あるいは、
「今の洗濯機で不便だったところが一つ解消するとしたら、何が一番でしょう?」
この質問はかなり使えます。
最後に、
「容量・使いやすさ・機能・価格でしたら、どれを一番重視されますか?」
全部入りの商品を勧めるのではなく、そのお客様が何にお金を払いたいのかを見つけます。
3.「困りごと」だけでなく「背景」まで聞く
ここから一段上の接客です。
たとえばお客様が、
「大きな冷蔵庫が欲しい」
と言ったとします。
ここで500Lの商品説明を始めるのではなく、
「今より大きくされたいのは、何か理由があるんですか?」
と聞いてみます。
「冷凍食品をまとめ買いするようになって……」
という答えなら、
お客様が欲しいのは大きな冷蔵庫ではありません。
本当に欲しいのは、
「冷凍食品をたくさん保存できる生活」
です。
ならば比較すべきなのは総容量だけではなく、冷凍室の容量や使いやすさになります。
ここが、
商品販売から問題解決型販売への転換点
です。
4.「なぜ?」を直接聞きすぎない
深掘りは必要ですが、
「なぜですか?」
「それはなぜですか?」
「どうしてですか?」
と続けると、お客様は尋問されているように感じることがあります。
そこで柔らかくします。
たとえば、
「乾燥は必要ないです」
と言われたら、
❌「なぜ乾燥はいらないんですか?」
ではなく、
「今も基本的には外干しですか?」
あるいは、
「乾燥はあまりお使いにならないんですね?」
こうすると自然です。
5.質問したら「共感+確認」を入れる
お客様:
「今の洗濯機、洗剤を毎回入れるのが面倒なんですよ。」
販売員:
「なるほど。毎日のことですから、そこが少しでも楽になるといいですよね。」
そして、
「でしたら、自動投入が付いたタイプをご覧になってみませんか?」
となります。
この間に、
聞く → 共感する → 確認する → 提案する
という流れがあります。
いきなり、
「それならこの機種です!」
と行かないことです。
6.「言ったこと」を提案時にもう一度使う
これは佐々木さんにぜひ意識してほしい技術です。
お客様が最初に、
「共働きなので、とにかく家事を楽にしたい」
と言ったとします。
10分後の商品提案で、
「先ほど『家事を少しでも楽にしたい』とおっしゃっていましたよね。でしたら、この自動投入や乾燥機能は○○様の使い方には合うと思います。」
と戻します。
すると商品機能が、
メーカーがアピールしている機能
から、
お客様自身が欲しいと言った機能
に変わります。
これは強いです。
7.接客で使える「7つの基本質問」
全部を聞く必要はありません。自然な会話の中で必要なものを使います。
「現在はどんな商品をお使いですか?」
「何年くらいお使いですか?」
「今回はどういったきっかけでお探しですか?」
「今お使いのもので、不便なところはありますか?」
「今度買い替えるなら、こうしたいということはありますか?」
「普段はどんな使い方をされていますか?」
「一番重視されるとしたら、どこでしょう?」
この7つを丸暗記するというより、
現状 → きっかけ → 不満 → 使用状況 → 理想 → 優先順位
という流れを覚えておくと応用できます。
8.そして「困りごと→Panasonic」に橋を架ける
ここまで聞いて、ようやくPanasonicの出番です。
たとえば、
お客様
「共働きで洗濯する時間がありません」
↓
深掘り
「特に何が大変ですか?」
↓
お客様
「洗剤を入れて、終わったら干して……ですね」
↓
確認
「できるだけ洗濯にかける手間を減らしたいということですね」
↓
解決策
「でしたら、自動投入や乾燥まで任せられるタイプが合いそうです」
↓
Panasonic製品
「こちらの機種でしたら……」
ここで初めて具体的な機能を説明します。
つまり、
商品 → お客様
ではなく、
お客様 → 困りごと → 解決方法 → 商品
の順番です。
9.「困りごとカード」を頭の中に持つ
これから佐々木さんが売場に立つとき、商品を見ながら、
「この機能は、どんな人の、どんな困りごとを解決するんだろう?」
と考えてみてください。
たとえば自動投入なら、
自動投入=便利な機能
で終わらせず、
誰に?
「共働き」「子育て家庭」「洗濯回数が多い」「毎回量るのが面倒」「洗剤量に迷う」
↓
どんな問題を?
「洗剤投入の手間」
↓
どう変える?
「洗濯物を入れてスタートするまでの作業を減らす」
という具合です。
これをすべての主要機能について作ります。
第2章の結論
販売員が話す量を増やすことが、販売力向上ではありません。
むしろ、
「何を説明するか」より「何を聞くか」。
そして、
聞く → 深掘りする → 共感する → 整理する → 解決策を示す → Panasonicにつなげる
この流れを身につけることです。
佐々木さんが今まで行ってきた接客を見ると、「現在何を使っているのか」「何年使っているのか」「なぜ買い替えるのか」まではかなり自然に聞けています。次のレベルは、そこからもう一歩踏み込んで**「今の商品で何が不満なのか」「新しい商品で生活をどう変えたいのか」まで聞くこと**だと思います。
そして第3章では、さらに面白いところへ進めます。
**「お客様の言葉から“潜在ニーズ”を発見する技術」**です。
たとえば「10年使ったから買い替えたい」という一言の裏側から、何を聞き、どう「本当の購入理由」を発見するのか。ここを実際の家電接客事例を使って体系化すると、かなり実戦的な販売ノウハウになります。